家庭犬の訓練 5

  ☆☆☆ 待つ事を教える ☆☆☆

   停座(ていざ)

 脚側行進は出来るようになったでしょうか?脚側行進が出来るようになれば停座:スワレを教えます。犬から答えを引き出すには四つの方法があります、偶然、誘導、強制、叱責です。訓練ではこの四つの方法を使い分けて犬に人の要求を明確にしていきます。締まる首輪を犬に付け、その首輪に綱を付けて綱を上に引きあげます。この時綱が顎の下から出るようにして下さい、逆:頭の後ろから出ると犬は首が絞まってしまいます。犬の顔が上を向くはずです。顔が地面を向いているときは、両手を顎の下に添えて綱とともに引き上げて下さい。犬が飛びついたり、立ち上がる時は一旦更に上に引き上げてから少し綱をゆるめます、座ったでしょうか?これが停座です(イラスト7)。綱を弛めても座っているようなら褒めます。動くようならすかさず綱を上に引き上げます。この時の綱の方向、力加減を良く覚えて下さい。脚側で犬を停座させようとすると、綱は貴方の胸に向かって引き上げる事になるはずです(イラスト8)。

 脚側行進をしながら合図を送ります、「スワレ」とはっきり言います。合図と同時に止まらないで下さい。また、合図を送る前にも止まらないで下さい。犬への要求は先ず合図(命令)で始まります。この際、合図と同時に素早く犬が答える必要も、答えさせる必要もありません。答える速さは犬の認識が出来てくればおのずとはやくなります。また、合図以外に次に起こる事を犬に予測させるような行動は控えて下さい。犬への要求は合図だけで伝えるようにします。同じ合図はいかなる場合も同じ答えを犬に求めます。それは人や犬の都合で変わるものではありません、散歩中でも部屋の中でも、晴れていても雨が降っていても、ヨソの犬がいても猫が鳴いても、あるいは貴方が寝ていても走っていても、同じ合図は同じ答えを犬に要求します。「スワレ」はっきりと合図したら次に綱を上に引き上げ止まります(くどいようですが、あわてて綱を使う必要はありません、ゆっくりと引き上げて下さい。)。前記の要領でここで確実に座らせます(イラスト9)。

 慣れてくると犬は、綱を引き上げ始めると次に行われる事を予感して止まります。ここで歩き続ける人との間に距離が出来るはずです。この距離に慣れさせる為少し(十秒程度)間をおきます。綱を弛めて下さい。動き出すようならすかさず綱を上に引き上げ確実に座らせます。ひんぱんに動くようなら弛めないで綱を引き上げたままにして、綱が張られた状態を保ちます。脚側の位置に正確に犬が来るように犬の元に戻って下さい。脚側停座を褒めるように、安心させるように犬を褒め脚側行進を再開します。脚側行進では犬に常に人の左足のそばにいる事を要求しました、人の要求がスワレに変わった後でもそれを知らない犬は当然以前の要求を満たそうとします、そしてそれを拒まれます。今まで良いとされた行為が突然否定されるわけですから犬は不安でいます、それを解消するのです。「スワレ」の合図から繰り返します。犬との距離を広げます。犬が動くようならすかさず距離を縮め、綱を引き上げ確実に座らせます。

   ゲーム

 これは一つのゲームです。停座をさせて離れた時、犬が動くと人は綱を引き上げて確実に犬を座らせます。この動作は犬が動いた事へのペナルティーとして人に与えられた特典です。犬に隙を見せて下さい、動くようならすかさず特典をいかして下さい。犬の出来に従ってわざと隙を見せ罠を仕掛けます。引き綱一杯に離れても動かなくなったら犬の後ろを回って元に戻ります、この時も動き始めたらすかさず綱を使い確実に犬を座らせます。ここまでは綱を手から放してはいけません、いつでも使えるようにしています。引き綱一杯離れて後ろを回って戻っても動かなくなったら、犬の元に戻る途中で綱から手を放します。犬が動くようなら犬の首に近い部分の綱を掴んで引き上げます。短く綱を使う事です。引き綱一杯まで犬から離れたり、犬の後ろを回って戻ったり、手から綱を放したり、これらはすべて人が仕掛けたフェイントです。このフェイントに犬が引っかからなくなると伴に、犬の心の中では要求されている事への認識が確実に強化されています、そして更に。

 犬が動かなければ綱から手を放すポイントをだんだん早くしていきます。犬が座ったらすぐ綱を放しても構いません、そうなったら今度は犬から離れる距離を伸ばします。もう綱を持っていなくて良いのですから、好きなだけ犬から離れる事が出来ます。但し今度は、犬が動くようなら叱ります。犬の元に行き綱を両手で短く、それも出来るだけ犬に近い部分を持って、貴方の胸の方向に向かって犬にショックが加わるように強く素早く引くのです「コラッ!」「イケナイ!」(イラスト10)。例えばフセで犬が勝手に立ち上がったのを叱る場合もこれと同じ方法を用います。訓練は犬の認識の強さによって進みます、今までは叱るより強制する方が効果的でした。綱を引き上げ確実に座らせる事、この操作は強制です。しかし、ある程度要求されている事への認識が出来てきたら叱った方が効果的です。叱る事によって認識を強化するのです。この場合、動いた犬を叱るのは、待っていなかったからでは無く要求された動作・停座をしていないから叱っています。犬に要求したのは待つ事ではなくスワレです。叱ったら、はじめに座らせていた場所に強制的に戻して、強制的に座らして下さい。例えば犬が動いても、人が振り向いたとき座っていれば良いのか、というとそうではありません。位置がずれているという事は、要求された動作をしていなかったはずです、叱って元の場所でやり直しです。叱った場合は、再び犬が動いて叱る事ばかりが続かないように、それ以降は綱を持ちます。[U人1] 

   失敗を設定する

 スワレをさせて離れます。犬の元に戻って褒めてやります。座って待つ訓練です。戻って褒めようとした時犬は、思いきり走って遊びに行きました。決して叱りません。心の中はともかく顔はにこにこ笑って見送ります。もう一度やります、逃げたらダメよなんて絶対いいません。ニコニコ笑ってアマーイ顔をして、そ、まるで無防備という態度で離れます。今度は引き綱の替わりにヤードといって、十メートルほどの紐を付けました。さあ、どんどん遊びにいって頂戴(^_^)

 訓練ではこのようにわざわざ失敗を設定します、失敗しないようには配慮しません。失敗はまたと無い訓練のチャンスだからです。また、手も足も出ない状況で無駄な叱りはしません。犬に何かを教えるのは、圧倒的に人に有利な状況を作ってからです。これから叱られる事を犬に知らせる必要もありません。

 呼んでも来ない犬の矯正にもヤードが使われますし、使うべきです。が、ヤードを使えば、犬が呼んだら来るようになる訳ではありません、使い方があるようです。使い方を間違えるとヤードが付いてれば来るが、付いていないと来ないというようになってしまいます。ヤードは付いてなかったら手も足も出ない遠くの犬に対して、確実に気持ちを伝える為に用います。「コイ!」反応がなければ、思いきりヤードを引きます。来るまで何回でも使い、来たら受けとめてやります。来たら受けとめますが、迎えに行ったり捕まえたりはしません。犬が自分から(自分の力で)来るまで、ヤードを使います。それが犬の答えです、犬の答えを引き出す事とそれをうまく受けとめる事です。違いはここにあるようです。

   一動作一声符

 いかなる場合も同じ合図は同じ答えを犬に求めます。それは人や犬の都合で変わるものではありません、散歩中でも部屋の中でも、晴れていても雨が降っていても、ヨソの犬がいても猫が鳴いても、あるいは貴方が寝ていても走っていても、同じ合図は同じ答えを犬に要求します。

 一つの動作に対しては一回だけ合図を与えます。停座に対しては「スワレ」一回だけです。あたかも念を押すように、既に座っている犬に対して何回も合図を繰り返す人がたまにいます。「スワレ」「スワレ」「スワレ」。意識付けしようとしているようですが必ずしも犬が、そう都合良く人の思惑どおりになるとは限りません。ひょっとしたら犬は「スワレ」ではなく、「スワレ」「スワレ」「スワレ」と続けて三回唱えることが停座の合図だと理解するかも知れません。あるいは「スワレ」で座ったのに人はまだ別に何かしてほしいのかな、と考え始めるかも知れません。犬に人の要求を伝えるのは一回の合図で十分です。

 脚側行進の時に「スワレ」・停座を要求しました。犬は座りましたが、その時位置が脚側からずれました。これは修正する必要ありませんし、修正すべきではありません。「スワレ」の合図はあくまでも座ることだけを犬に要求しています、脚側について座ることではありません。例えば、人から離れた所にいる犬に対して「スワレ」の合図は、その場での停座を意味し、脚側までやってきての停座を要求していないのと同じです。

   伏座(ふくざ)

 停座待機が出来るようになったら伏座「フセ」を教えます。停座待機の場合の合図は「スワレ」です、「マテ」は要りません。座っている事を要求するだけで、付随的に待っているという要求は満たされるはずです。「フセ」も「フセ」だけでその位置での待機を含みます。脚側行進をしながら「フセ」と合図をします、もちろん犬は素知らぬ顔で歩き続けるはずです。両手で綱を持って力ずくで無理矢理、真下に引き下げます(イラスト11)。この場合も合図と同時に電光石火のごとく犬を伏せさせる必要はありません。台風が吹けば桶屋が儲かるのごとく、「フセ」の合図と伏せる事の因果関係がやがて犬に分かれば良いのです。どんな形でも構いません、寝転がっても構わないですから0.1秒でも犬の胸が地面に付くようにして下さい。「ヨシッ!」で解放します。それを繰り返すうちにこの0.1秒を伸ばしていきます。やはり「ヨシッ!」でダイレクトに大きく答えます。綱を弛めても伏せているようなら犬から離れます。離れたとたん立ち上がるようなら犬を叱ります。叱り方は停座の時と一緒です。綱を両手で短く持って貴方の胸の方に強く引いて下さい。良くある過ちですが、叱る事と伏せる事が一緒にならないようにして下さい。叱っている時は犬はまだ伏せてないはずです。叱ったらフセをさせ軽く優しく頭を撫でます。これは安心させる為です。停座の場合と違って早々に叱るという方法を用い始めました。これは停座を教えた事によってある程度フセの下地が出来ているからです。犬から離れる事が出来るようになったら、強制を誘導に変えます。無理矢理下に引いていた綱を軽く引き下げるだけにします。誘導で伏せなかったり中途半端な姿勢の時は叱ります。犬の元に戻ったら「アトエ」と合図して脚側停座をさせてから褒めて下さい。それまでに立ち上がったら叱って伏せさせます。

   ダブルロープ

 どうしても頑として伏せをしない、あるいはイヤがって咬んで来るような場合はダブルロープを用います。首輪を付け引き綱を付けてしっかり犬を係留し、その上で更に別の首輪と綱を犬にとりつけます。別に付けた綱を係留してある綱と反対の方に引きます(イラスト12)。犬は係留してある綱と引っ張られた綱によって極端に自由を拘束された状態になります。ワガママな犬ほどもがきます。どんなにもがいても無駄な事を犬に確認させて下さい。そのまま引き続けていると犬は息が出来ないので弛めます。犬が落ちついたら「フセ」です。強制するなり手取り足取りするなりして伏せさせて下さい。横に引き倒しても構いません。伏せた状態で良くなだめるように褒めて下さい。犬が立ち上がるのは構いません。どんな体勢でも気持ちを十分にほぐすことが大切です。「フセ」から繰り返します。拒否したり抵抗する場合は綱を引くところからやり直しです。犬が次を予感して「フセ」の合図の前に伏せたり、伏せ続けている場合は一旦犬を動かして下さい。犬は係留してある綱を半径とする円の範囲内で自由に動けるはずですから、その円の中に収まるように綱を引いたり、綱を持ったまま動いたりします。犬が自由を確認したら「フセ」です。これはやりとりを取り戻す為です。大切なのは伏せる事ではなく人に答える事です。そうで無いと、伏せを要求する度にダブルロープをしなければならなくなります。

 ダブルロープは非常に強力な強制力を持っています。良く人は、叩いて力尽くで犬をねじ伏せようとしますが、犬は興奮しますし、肉体的にもダメージを残します。ダブルロープは犬に肉体的苦痛をあまり与えません。また、肉体的ダメージもあまり残しません。しかし犬によっては非常に大きな精神的ショックを与えます。それは警戒しなくてはいけません。その精神的ショックは肉体的にも負担を与えます。人がそれに気づかずに用い続けるなら、ひどいダメージを残したり、極端な場合取り返しのつかない事態が招く恐れもあります。

 ダブルロープがその威力を発揮するのは咬み癖のある犬に対してです。犬の攻撃の圏外から犬を制御できます。特に、人に体を委ねることに抵抗を持つ犬には良く用います。ダブルロープの理想的なフィニッシュは、犬が人の手の中で安心して撫でられている状態です。体を触られるのを嫌がり

発生するかも知れません。犬に与えます。

   休止(きゅうし)

 停座が出来ている犬は、伏せを始めても比較的短い時間で犬と距離がとれるようになると思います。十歩ほど犬から離れても、戻るまで伏せたままでいられるようなら休止を開始出来ます。休止は、人が帰るまで指示された場所で犬だけで待つという訓練です。人が帰って来るのが何分後か何時間後かは分かりません。とにかく帰って来るまで犬はその場で待っていなければなりません。「フセ」で犬から離れます。数歩離れたら犬と向き合って立っています。すぐには戻りません。距離を離れる必要はありませんが、ある程度の時間(十から二十秒ほど)は待たせて下さい。犬の元に戻り「アトエ」の合図で脚側停座をさせて褒めます。途中で動くようなら叱ります。叱った後には再度犬から離れますが、離れる距離も離れている時間も短くします。犬が動いたら叱らなければなりませんが、叱る事ばかりが続かないように状況をコントロールして下さい。確実に待つ事が出来るようなら、離れる距離を十歩程度に伸ばします。更に建物の角などを利用して、犬から姿が見えないように隠れます。但し、人は犬から目を放さないで下さい。犬が動けばすぐ犬の元に行って叱り、姿は見えなくても建物の影に人がいる事を知らせます(イラスト13)。

 休止は難しい訓練ではありません。犬には非常に理解しやすい作業の一つです。しかし、時としてこの訓練を大変難しいものにしている人もいます。叱る事は、犬への一つのペナルティーです、犬にとって苦痛でなければなりません。犬がもっと叱られていたいと思ったり、もう一度叱られたいと考えてしまうなら、それはペナルティーにはなっていません。犬は休止の途中で立ち上がってみます。するとすぐご主人様が大急ぎで駆けつけて来てくれます。どうやらご主人様に会いたくなったら立ち上がれば良いようです。犬がこう考えるようになったら休止の訓練は難しいものになってしまいます。

 休止で人は、犬の比較的近くに姿を隠しています。この状態で三分程度確実に休止が出来るようになったら、罠を仕掛け要求されている事への認識を更に強化します。例えば、大好きなボールを転がしたり、おいしそうな臭いをさせたり、知らない人に呼んでもらったりするのです。罠にはまれば叱りますが、罠を仕掛ける目的は叱る事ではありません。罠を罠として犬に理解させる事です、その為には犬が罠にはまってばかりいる事が無いように、たまには易しく罠をセットする事です。

   招呼

 さあ、犬は貴方と離れて一人でいられるようになったでしょうか?何があっても、指示された場所でじっとしていなくてはならない事を犬が覚えたら、今度は人の都合の如何ではじっとしていてはならない事を教えます。脚側行進で「常に人と一緒にいろ」と要求し、停座や伏座では「離れていろ」と要求し、今度は「離れているな」と要求するのですから人は全く勝手です。引き綱の替わりにヤードを付けて脚側行進します。一定方向に歩くとヤードは伸び切るはずです、回れ右をして犬を停座させヤードの反対の端まで離れて犬と向き合って下さい。右手をまっすぐ上に上げると同時に「コイ」と言います。今まで合図は言葉だけでした、それを声符と言います。今回手による合図を用いましたがこれは視符です(イラスト14)。犬は動かないはずです。静かにヤードを取り、それを持ったままこれも静かに後ろに下がります。目立つような動きをしないで下さい。イヤでも犬は動く事になるはずです。動いてはいけないはずなのに何故動かすのか?犬は怪訝そうにしていると思います。構わず下がり続け途中からしゃがんで呼び寄せて下さい。犬には不安があります。要求されていると思っていたのと違う事をしろというのですから当然です。その不安を十分解消します。抱きかかえてヨシヨシ。繰り返します。不安が解消されたら勢い良く走って来るようになります。そして更に繰り返すと、合図の前に来ようとするはずです。犬は座ってなくても良いのだと考え始めるのです。「コイ」の合図があるまでは来てはいけないことと、はじめに要求されていた事をはっきりさせてやって下さい、座っている事です。叱って待たせた場所に戻して「スワレ」です。

   脚側への動きを得る

 「アトエ」「スワレ」「フセ」「コイ」基本的な犬の訓練は、すべて紹介しました。これらはこれまで解説した方法を用いて、練習次第で出来るようになるでしょう。しかし私は、非常に重要な犬の動きに関する訓練について、一つ省いて解説を進めてきました。しかも私は、その訓練をほとんど一番先に行っているのです。「アトエ」の合図は脚側の位置を要求します。犬がその位置にい続けるようには今まで紹介した訓練で出来ます。しかし、任意の位置から脚側の位置への犬の動きを作るには、今までの解説では不足かも知れません。

 さあ、訓練を始めます。犬は貴方の前を歩いているかも知れないし、向き合っているかも知れません、あるいは貴方にじゃれているかも知れませんし、綱を引っ張っているかも知れません。もしヨソに行きたそうにしているなら構わず行かしてやって下さい。犬を自由にすることから訓練は始まります。もちろんスパイクして、ヨソに行ってはいけないと学習させます。ここで「アトエ」で脚側を要求します。強制して下さい。十分に力を入れる事が出来るように両手で綱を持ちます。出来るだけ首に近いところ、顎の下あたりの綱を持ちます。十分に足を踏ん張って一緒に下がりながら、犬の体を自分より後ろまで引き下げます。左、脚側のがわに引き下げて下さい。丁度脚側ではなく少し余計目に引き下げるのがコツです。強制の常で犬を物のように扱うことです。ほとんどの犬は抵抗して踏ん張るはずですが構わずやって下さい。自分より後ろに行ったら優しく呼んで下さい。脚側の位置を示して、ここだよココ。脚側の位置で安心させるように十分にほぐします。強制が効いて来て、犬が自分で動こうとし出したら一緒に下がるだけにして、強制から誘導に切り換えます。

   ピークを制する

 さて、ここまで来ると脚側行進もかなり落ちついてきたと思います。一つの形では確実に制御出来ているでしょう、そう、綱をつけて歩く分にはです。更に進めます、軽く走って下さい。犬は興奮します。じゃれついたり、前に出ようとしたり。急に止まって下さい。犬が要求されていることを忘れて、自分だけ走り続けるようならスパイクです。そうでなければ、あわてて脚側に戻って来ようとするはずです、この動きは助けます。その動きが途切れないようにスムースに脚側に誘導し褒めて、脚側につこうとする犬の気持ちに答えます。もし犬が行きすぎないで人と一緒に止まれたら理想的です。人が走り出したとき、犬は興奮し人と一緒かあるいは人の少し前に位置するのが本当です。犬が走るのを喜ばなかったり遅れるのは、訓練が犬を拘束しているか、あるいは犬に何らかの障害が起きているのかも知れません。

 今までは安心させる答え方でした、犬を受けとめていました。より積極的に犬に答えを返します。満々と水を湛えた堰を切るように、気持ちを解放します。犬の喜びをピークに持っていきます。例えば、仕事から帰ってきた貴方を迎える犬の喜びを想定して下さい。あるいは食事をもらえる喜びかも知れませんし、散歩に行く時のはちきれんばかりの喜びでも良いです。その喜びを犬に求めるのです。貴方がじっとしていては難しいでしょう。大抵はオーバーに表現しながら、犬から離れるように下がることでそれが得られると思います。犬の喜びがピークに達したところで「アトエ」の合図をして下さい。犬が喜びのあまり要求が理解できないようなら強制して下さい。少しでも答えがあるなら、誘導して助けます。興奮から冷静へ、動から静へ、急激な転換、切り換えが大切です。喜ぶときには喜んで、しかし命令には確実に答える事です。いかなる場合でも、命令して良いし、犬は当然のごとくそれには答えなければなりません。

 喜びのピークを作り、そのピークの瞬間に命令して答えを得る、即ちピークを制することには、大きな意味が三つはあります。先ず、興奮状態での犬のコントロールを得る事です。このピークの時の興奮状態までは、ヨソの犬に対しても、猫を見て興奮してもコントロールできるという事です。もう一つは動きを作る事です。ピークの瞬間に次の命令を出す事は、エネルギーに満ちた状態で次の動作を要求しています。そのエネルギーのすべてが次の動作に流れます。犬は、見せたこともないほど喜んで次の動作をします。若干の誘導は問題になりません、高い興奮状態を保つ事が優先します、というよりいかにそのピークの状態を保ったまま要求する動作を引き出せるかです。これが、いわゆる犬を動かす技術です。

 最後にやはり手応えです。犬を走らせる、犬を興奮させる、そしてその状態での制御は確実に人に手応え、犬は答えてくれるという実感を作ります。ここまで来れば、つけている引き綱はほとんどその意味を失います。ピークを制する事で、今までの、より冷静にと抑える方向ばかりの犬の取り扱いが反対になります。より興奮させるのです、より強い答えが得られます。


 [U人1]褒め方は今までは不安を解消する為に安心させる事が中心でした、犬を受けとめていました。それをより積極的に犬に答えを返す褒め方にします。犬の元に戻ったら、満々と水を湛えた堰を切るように、気持ちを解放して下さい。犬が動きだすほど強く大きく「良くやった!」と表現します。

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