GPSと救助犬 2002

北海道ボランティアドッグの会の、2002年秋の救助犬認定試験が11月3日、北海道ウトナイ湖畔の原野で行われた。今年は、「災害」に対する試験は中止され、北海道での救助犬にとってより重要な、原野での捜索だけを行うこととした。これに伴ない、これまでに無い思い切った状況を想定した。

1 捜索エリア:現場はウトナイ湖と国道36号線、日高自動車道、JR線路に囲まれた幅約300メートル、長さ約2キロのほぼ四角形のエリア。このエリアを三つに分けた。第1エリア0.185平方キロ、第2エリア0.233平方キロ、第3エリア0.25平方キロの広さがある。第3エリア0.25平方キロは、およそ500メートル四方の広さとなる。

試験エリア

現場の地形図(1/25000):顔のアイコンはヘルパーの位置をあらわしている。
helper1:北緯42度41分29秒  東経141度41分45秒2
helper2:北緯42度41分15秒7 東経141度42分13秒9
helper3:北緯42度40分51秒9 東経141度42分47秒6
helper4:北緯42度41分06秒5 東経141度42分27秒4
helper5:北緯42度41分02秒3 東経141度42分36秒6


2 遭難状況:設定は上記捜索エリア内にて5名の人間が行方不明になったと想定した。捜索には上記のようにエリアを決めて、3チームを同時に投入した。試験なので制限時間は1時間。エリア全体に5名のヘルパーを隠した。どのエリアに何名いるかは、ハンドラーに通知しない。ただし、全体で5名のヘルパーが発見された時点で作業は中止してよいとした。受験者は15チーム。これを3チームずつ5班に分けた。残念ながら5名を発見できた班は無かった。

3 捜索本部:当日は非常に風が強く、残念ながらテントを建てる事が出来なかった。しかも用意したハンディ無線があまり届かず、仕方なく捜索本部はエリア2の端にワゴン車をおいて捜索本部とした。捜索本部にはノート型のPCを用意し、サポーターから寄せられた情報を元にハンドラーの位置を確定した。今後、捜索本部にはモービル形の無線機が必須となるだろう。また、今回はノート型パソコンを使ったが、これも操作性などの面からデスクトップ型のコンピューターとADSL回線でインターネットにつなぎたい。インターネットからはリアルタイムに地図情報を得る事が出来る。ハンディ型の無線機は思ったほど届かず、連絡には携帯電話がしばしば役に立った。

4 装備:ハンドラーにはディパック。水、非常食、雨具は最低限用意していただいた。実際の活動に、これらは必須だろう。さらに、今回はサポーターに持ってもらったが、GPSと無線機、携帯電話なども必須だろう。ヘルパー発見時の連絡は、サポーターに任せずハンドラー自らが行うことを要求した。実際の活動にあたっては、位置の確認と連絡こそが重要である。

5 サポート:今回は、北海道ハイテクの生徒13名が、ボランティアで手伝ってくれた。5名を交代でヘルパー、3名をサポーターとしてハンドラーに一人ずつついてもらった。サポーターには15分おきに現在位置を連絡させた。

6 審査:作業は犬の安全管理とハンドラーの安全管理を主題とした。いくら捜索能力が高くても、犬の行方がわからなくては、ハンドラーは遭難者の捜索どころではなくなる。ハンドラーの安全管理にとって最大の課題は、自身の現在位置の確認である。それは捜索エリアの掌握になって現れる。現場の状況の把握、GPSの活用などがハンドラーに求められる。

チーム名がそのチームの捜索状況にリンクされています

エリアチーム名サポーター発見
第1班1松本オコジョ葛西未発見
9:20~10:202平野ムサシ伊藤第2,第4
3今野ブッチャ堀口第4
第2班1石沢エーリン荒怜第1
10:30:~11:302佐藤シルフ菅原第2
3松本ボナンザ佐孝第3
第3班1浜川ふぶき沢井未発見
11:30~12:302広内リン堀口未発見
3石沢ナビタ葛西第4
第4班1福士アダロ伊藤未発見
13:15~14:152中谷ヴレス石沢未発見
3中村レオ小池第3
第5班1西川カール澤野第1
14:30~15:302今野ジュディ葛西未発見
3中村シャロン堀口第3
発見されたヘルパーの回数第1ヘルパー第2ヘルパー第3ヘルパー第4ヘルパー第5ヘルパー合計
2233010
班ごとの発見者第1班第2班第3班第4班第5班合計
第1エリア010012
第2エリア210003
第3エリア111115
合計2311210

第1班の第2エリアと第3エリアは、第2エリア内の同じヘルパーを発見した。
8 総括:作業時間は1時間。この1時間が10分程度に感じられたというハンドラーが多かった。より長い時間、より広い区域での作業が望ましい。そしてその作業でのノウハウは、実際の作業でのノウハウに直結するだろう。
従来、救助犬試験は犬の捜索能力の評価に主眼を置いていた。今回の我々が行った試験は、犬の能力の判定には主眼を置いてない。救助犬の能力の判定だけなら、これほど広いエリアや長い時間は必要ないだろう。それにもかかわらず、救助犬としての能力の判定は、ほぼ正確に出来たと思う。我々は実際の活動において、何が必要なのかを明らかにしたかった。その目的はほぼ達成されたと思う。

使用したGPSは、GARMINのetrex、summitが2台とvistaが1台。今回は位置の確認だけなのでsummitやvistaまでは必要なかったが、今後ナビゲーションなどに利用する上で、これらの機種を使用することにした。メモリーの容量の関係からか、vistaは大丈夫だったが、summitの方は、はじめに作業した2チームほどのデータログが消えてしまった。

GPSのデータログの吸出しには、DAN杉本氏作のカシミール3Dを使用した。また、2万5千分の一の地形図は、山旅倶楽部 のインターネット常時接続の地図を利用した。カシミール3Dは非常に秀逸なソフトである。

試験終了
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